<相続登記義務化の経過措置>
前回のコラムでは、相続登記の義務化について、一定の猶予期間(3年)があると解説しました。2024年(予定)以降の相続については、当然のことながら、相続登記の申請義務を定めた改正法が適用されます。それでは、改正法の施行日(2024年)より前に発生した相続についても、登記の申請義務は課されるのでしょうか?
結論から申し上げますと、改正法の施行日より前に発生した相続についても、相続登記の申請義務は課されます。(※1)
「施行日」と「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日」のいずれか遅い日から、法定の期間(3年間)が開始すると定められています。(改正法附則5条6項)
もしも、今現在(2021年)、相続登記を放置していたとしても、2024年の施行日を迎えた瞬間、相続登記申請義務違反になるわけではありません。施行日から3年の猶予期間中に相続登記(または相続人申告登記。後のコラムで解説)をすれば、過料に処されることはありません。
つまり、最低でも施行日から3年間の猶予期間があるということです。(※2)
一方で、改正法の施行日より前の相続だから(または改正法のことを知らずに)関係ないと安心していると、法務局から「登記申請すべし!」という通知が来て、驚かされてしまうことになります。
※1 基本的に法律の効力はその法律が施行以前にさかのぼっては適用されない。(法の不遡及という。)もっとも、改正法の立法趣旨は、今現在、相続登記がされていない不動産(いわゆる、所有者不明土地問題)を解消することなので、過去の相続にさかのぼって法が適用されるのはある意味、当然のことと思われる。
※2 施行日前に相続が開始し、施行日を迎え、その後に「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日」を迎えた場合、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日」から3年間が猶予期間となるため、施行日から3年が経過しても、申請義務期間が満了しないことになる。