④その他の財産
その他の財産としては、動産・保険・暗号資産・債権、その他の権利があります。
◆動産(簡単に言うと不動産以外の「もの」)
エンディングノートに、こまごまとお手持ちの「もの」を書き記す必要はないと思われます。車などの財産的な価値がある物またはご家族に引き継いで欲しい思い入れがある品物に限り、エンディングノートに記載すべきでしょう。
◆保険
保険会社の会社名・保険の種類・被保険者(保険の対象となっている人。例:死亡保険の場合、被保険者は、亡くなった人のこと。)の名前・受取人の名前・保険会社の担当者の名前・保険証番号などをエンディングノートに記載しましょう。不動産と同じように、別紙参照として、保険証券や契約内容のお知らせ等と一緒に保管することも一考に値します。
◆暗号資産等
仮装通貨、NFT、インターネットのアカウントなどをご家族に引き継いで欲しい場合は、パスワードを含め、できるだけ詳しい情報をエンディングノートに記載しておきましょう。(※パスワード等を記載する場合は、情報漏洩の対策を万全にしたうえで行う。)
(※現在のところ、パスワード等を管理する法人に対する開示請求が認められるかどうかにつき、明確な最高裁判例はないようです。そのため、パスワード等につき、相続人がアクセスできるようにしておくのが実務的な対応と思われます。)
◆債権
お金や物の貸し借りをしている場合、「いつ」「誰に」「いつまで」「いくらで」「何を」貸す又は借りるのか、などがエンディングノートの記載事項にあたります。もっとも、お金や物の貸し借りは、個人間の信頼関係の下に成り立っていることがほとんどですから、なるべくエンディングの前に解消しておくべきでしょう。(もし解消できない場合、エンディングノートの記載があることで、相続人と借主や貸主との間で紛争に発展することも考えられます。紛争を防止するために、客観的な証拠(契約書等)を保存しておくべきです。)
◆その他の権利
賃借権(※これは債権ですが)などの一般的なものから、温泉権や入会権などのマニアックなものまで、世の中にはいろいろな権利があります。エンディングノートに記載しておくべきではありますが、遺されたご家族のことを思うと、専門家に相談するなどして、生前にある程度の道筋をつけておいた方がよいと思われます。
Q.そもそも、どうしてエンディングノートに財産を記載する必要があるのか? 相続の発生後に横断的に調べる仕組みはないのか。
A.現状、そういった仕組みはありません。
・不動産につき、
①名寄帳:課税の対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にまとめたもの。
②所有不動産記録証明制度(令和3年度不動産登記法改正による。2026年予定)
などの調べ方がありますが、いずれも完璧ではありません。
(例:名寄帳には非課税の土地(私の道路など)が記載されないことがある。)
(例:所有不動産記録証明制度では、旧住所や旧氏名で登記された不動産は検索できないとされている。)
・有価証券につき、
株式会社証券保管振替機構(通称:ほふり)に開示請求をすることで、上場会社の株式等を開設している金融機関の口座を横断的に調査することができる。ただし、当然のことながら、非上場株式は調査できない。
・預貯金につき、
横断的に調べる方法はない。(少なくとも当職は知らない。)